研究室のご案内
 これまでいくつかの研究室を経験し、いくつかの分野で異なる実験をしてきました。おもしろい仕事もあれば、しんどいと感じる研究もありました。私の経験から言えることはおもしろいと感じながら行った研究では、レベルはそれほど向上していなかったということです。逆にきつい思いをして身につけた技術や考え方は今も研究の基礎となり現在の研究生活を支えています。

 最近では楽しく仕事をすることが良いように言われ、ほめておだてるように言われることが少なくありません。しかし、それだけで本当に世界に通用する研究者が育つのでしょうか。しかし、私はほめることだけを教育だとは思っていません。あるレベルになれば長所を伸ばしたりやる気にさせることは良いことだと思います。しかし、システムを作り効果的に技術や方法を身につけていくことに本当の教育があると考えています。

 だからといって単に技術や方法を教えることは全く無意味であると思っています。なぜなら、技術はいずれ新しい方法に取って代わられます。そのわずかな間だけの技術を教えても意味がありませんし、プロトコールだけを教えられて育った研究者は新しい技術を身につける時にだれかに頼る傾向があります。このような研究者になってしまうので惨めではありませんか。技術の身につけ方を学ぶことに本当の意味があるのです。

 最近の若い研究者を見ていると基礎固めする時期に十分な技術がないままに先に進む傾向があるように感じています。基本的な発想は欠如したまま先に進めばいずれ破綻することは明らかです。基本を身につける地道な努力なしに栄光はありません。山は苦しいからこそ登る楽しみがあるのです。(注;私は山登りはしません)

 研究室をスタートさせて2年が過ぎようとしています。研究者と管理者の違いにとまどうこともあり、十分な指導ができないまま時間が過ぎたこと少し後悔しています。しかし、これから研究室のマネジャーとして管理をやり直しつもりです。その最初の仕事として研究者として基本操作を身につけるプログラムを作成しています。基本手技だけでなく研究を行う上での発想や手段を段階的に学んでいただき世界に通用する研究者を育てていきたいと考えています。